ART出生児の発育・発達に関する研究結果(その一)

JISART宇津宮 隆史、田中 温、見尾 保幸
山梨大学医学部鈴木 孝太、山縣 然太朗
徳島大学医学部 桑原 章、苛原 稔
東京医科大学 久慈 直昭

JISART加盟の不妊治療施設17施設から、患者様に研究協力のお願いを送らせていただき、多数のご夫婦からアンケート調査へのご協力をいただきました。1歳6ヶ月までの発育・発達の結果がまとまりましたので、公開させていただきます。

研究の背景とねらい

体外受精によって生まれる子どもの数は日本で生まれる子どもの3%を超え、子どもを得る方法としてごく普通の方法になっています。しかしこのようにして生まれてきた子どもの健康や発育・発達については、これまで我が国で大規模な調査が行われたことはありませんでした。
そこで2010年度から厚生労働省後援の研究として、体外受精で生まれた我が国の子ども達が健康に育っているのかどうか、特別かかりやすい病気はないか、という調査を開始しました。

方法

この調査では、体外受精で生まれた子どもを、同じ頃にそれ以外の方法で生まれた子どもと比べています。実際には、2008年に体外受精を行って生まれた子どものご両親と、同じ時期に出産した子どものご両親に、郵送で研究への協力をお願いしています。

調査の内容は、子どもの身体的発育(身長、体重など)、発育発達(会話、歩行など)、それに生まれつき病気を持っている子が多くないか、特定の病気にかかりやすくないかどうかです。

なお、今回は、単胎(双子や三つ子ではないこと)のお子さんだけを選び出して比べています。これは、出生体重、早産には双子以上か、そうでなく一人で生まれたかによって明らかな差があり、またその後の発達の遅れや先天奇形も双子以上の多胎の場合のほうが多いことがわかっているためです。

結果

体外受精で生まれた子ども3004例(新鮮胚移植と凍結胚移植を含む)、体外受精ではないが不妊治療で生まれた子ども726例、自然妊娠で生まれた子ども671例の回答がありました。この中から、条件をそろえるために双子・三つ子などの多胎を除き、一人のお子さんが生まれた例(3348例)だけを比較しました。なお表によって母数に違いがあるのは、記入漏れなどで判別できないデータがあるためです。

また、お子さんの生まれた月によって,アンケート記入時の月齢に各群間で小さな差がありますが、全てのお子さんの月齢が同じであった場合のデータとなるように、補正を行っています。

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